ワイナポトシ③ 標高6000mでは神の声が聞こえる
AM 0:00
パンとコーヒーの軽食をとる。
しかし、セシリオは「バキ」に出てくる「烈 海王」に似てる。
烈 海王
AM 1:00
準備をしていよいよアタック開始。
思ったよりも寒さは感じない。しかし微かな頭痛が不安を掻き立てる。
私の雨男っぷりよりヒデさんの晴れ男振りが勝ったようで、天気は良好。輝く星空の下を進んで行く。
現実離れしたこの現実をありのまま受け止め歩く。息が苦しくても、周りの景色が自然と笑みを取り戻させてくれた。
溶けることのないさらさらとした雪景色は、暗闇の中で見るとまるで砂漠のようだった。ヘッドランプが映し出す限られた範囲の粉雪が舞う様子を見ると、まるで夜の砂漠を当てもなく彷徨っているような錯覚に陥った。
でも目の前のザイルの先にはヒデさんがいる。最初は喘息が辛そうだったけど、ペースを掴むと段々と楽になっているようだった。
お互いどっちがギブアップしても文句は言わない。そう話し合っていたけれど、何故かお互いギブアップはしないと、言葉を交わさなくても分かった。
進んではブレイクを繰り返す。
「ヒデさん大丈夫ですか?」
「うん大丈夫。森くんは?」
励まし合ってなんとか進む。
傾斜が70度はありそうな壁を登る。
やっと6000m付近まで来た。
ここまで来ると明らかに空気が違った。少し前まで歌いながら歩いていた余裕が、この時点で跡形もなく消え去った。
最後の九十九折の坂道。
深呼吸をして、やっと半歩進める。
アイスアックスが上がらない。
足が強烈に重い。
何度も止まって呼吸を整える。
自分を信じようと思った。今まで結構な困難があったけど、何とか乗り切ってきた自分を信じようと思った。
段々と空が白んでくる。
もう少し。
頂上まであと数メートル。
朦朧とする意識の中で声が聞こえる。
「もう休んでいいぞ。」
誰の声か分からない。
まだ休めない。視界が暗くなり、ザイルの感触だけで進む。
また声が聞こえた。
「コングラッチレーション!!」
セシリオの声だった。
目を開けると
目前には見たこともないような景色が広がっていた。
2015年 4月 23日 AM7:30
ワイナポトシ 登頂
上の写真はスカしてるけど、実際はこんなん。笑
(アイスアックスの影がヒゲみたいになってる。とか突っ込まんといて!)
最後の登り坂
ここで一日の始まりを見た。
振り返ってみると、けっこう険しい道だったみたい。
諦めなくて良かった。
P.S.2泊3日、本当に色々とお世話になりました。なんだかんだいってセシリオが1番カッコ良かったりする。笑
全部持ってったなぁ~!!